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介護報酬改訂に関する財務省の“温度感”を把握しておきましょう

厳しい方向性が提示された「財政制度分科会」

2015年4月の介護保険法改正・報酬改訂を見据え、いよいよ議論の佳境に入ってきた介護給付費分科会。他方、財務省が10月8日に開催した「財政制度分科会」においては、社会保障制度関連に関する予算について、とても厳しい方向性が提示されました。
国のお金の番人でもある財務省が、介護保険分野に対してどのようなスタンスで臨んでいるのか?を知ることは、次回の法改正が気になる介護事業者にとって、是非、おさえておかなければならない情報です。今月のニュースレターでは、財政制度分科会で示された介護分野に対する主要な論点をおさえつつ、次期法改正に対する国の温度感について確認してまいります。

抑えるべきポイント・視点とは?

10月8日の財政制度分科会の中で、介護分野に関して示された論点は大きく分けて10個ありました。
では、各々の内容を確認してまいりましょう。

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【その1】
介護サービス全体の平均収支差率は+8%程度と、一般の中小企業の水準(+2~3%弱)を大幅に上回る。介護職員の処遇改善加算などの充実を図る一方で、介護報酬基本部分に係る適正化(少なくとも中小企業並みの収支差となる▲6%程度の適正化) が必要。さらに今後高齢者が増加(市場が拡大)する中で、規模の経済によるコスト低減が見込まれることも踏まえれば、収支差率を中小企業の水準より低い水準とすることも検討すべきではないか(介護報酬水準を約▲1%適正化すれば、国民負担は年間約▲1,000億円軽減される)。

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社会福祉法人と民間の営利企業の会計基準が異なる中、収支差率のみを固定的に比較する事自体に違和感を覚えますが、要するに財務省としては「介護保険財政全体を圧縮させたい」という意向が強いということが、この文章から見て取ることが出来ます。

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【その2】
特別養護老人ホームにおいては、良好な収支差の結果、内部留保が蓄積していると指摘されており、現在実施中の予算執行調査(精査中)においても、改めて巨額の内部留保の存在が確認されている。今後は内部留保が蓄積しない水準まで介護報酬水準を適正化することが必要。
また、社会福祉法人には、民間事業者とのイコールフッティングの確立などの観点から様々な議論がある。
こうした中、現在、「規制改革実施計画」(26年6月24日閣議決定)に基づき、内部留保の活用に向け、社会福祉法人に対する社会貢献活動の実施の義務付けについて検討が進められているが、公費や保険料を原資として蓄積した内部留保については、地域支援事業など、現に公費や保険料を充てて実施している事業に限定して活用することが適当ではないか。尚、社会福祉法人の内部留保を巡る議論に関し、以下の点に留意が必要。
(1)社会福祉法人の会計においても減価償却費を計上しているため、建替えに必要な現金は、収支差がゼロであっても蓄積する。したがって、「建替えのために内部留保が必要」との議論は妥当でない。
(2)施設の増築のために必要な資金については、補助金に加え、低利の借入れ等による調達も可能であり、
「内部留保がなければ増築できない」との議論は妥当でない。

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内部留保の定義が曖昧な中、額の大きさだけで議論が進んでいることに違和感と危機感をもたざるを得ない状況ですが、社会保障財源が益々厳しくなる中、本テーマについては益々「粛清」の方向で議論が進んでいくことは間違いないと言えるでしょう。

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【その3】
ユニット型個室の室料については利用者負担となっている一方で、多床室(相部屋)の室料については介護保険の対象となっている。個室の利用者との公平性を確保する観点から、多床室の室料についても利用者負担を検討すべき。

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理論的には確かにその通りですが、これが実施されると、上記視点も含め、社会福祉法人の収支差減が更に誘発されることになることは必至です。次期改正は、社会福祉法人にとっては本当に厳しい話になりそうです。

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【その4】
軽度者に対する福祉用具貸与や住宅改修の一部の種目には、要支援・要介護認定を受けていない者であっても自費で利用しているものが含まれると考えられる。要支援・要介護認定を受けていない者との公平性も勘案し、必要以上に高機能のものについては給付の対象外とすべきではないか。

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「高機能」の定義がまだ見えてきませんが、ここにもメスが入ることは間違いないと言えそうです。

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【その5】
訪問介護は、「身体介護」と「生活援助」に分けられるが、例えば要介護5では、生活援助のみの利用件数は全件数の5%未満であるのに対し、要介護1では、生活援助のみの利用件数は全件数の5割を超えている状況。
要介護1の者に対する生活援助の内容を見ると、掃除の占める割合が最も多く、次に一般的な調理・配膳が多い。地域支援事業の見直しに伴う生活支援サービスの充実の状況も踏まえながら、軽度者に対するサービス内容の見直し(地域支援事業への移行、保険給付範囲の見直し等)を進めて行くべきではないか。

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介護予防・日常生活支援総合事業の推進と比例して、生活援助分野に対する更なる見直し(≒保険外への移行)が図られていくことは間違いないでしょう。

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【その6】
給付については、ドイツ、韓国では中重度者のみが対象とされており、要支援者、要介護1、2の軽度者は対象外とされている。

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ずいぶん以前から、「介護保険は要介護3以上の方々のみとすべきでないか」という提起があることは皆様もご存知の通りです。一気に大鉈を振るうかどうかは別にして、少なくとも今後、「中重度者以上」「経度者以下」の間で益々大きく線引きされる可能性は十分に考えられるでしょう

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【その7】
介護保険制度の創設以来、在宅サービスについては民間企業の自由な参入が可能とされる一方で、在宅・施設サービスのいずれについても、事業者は介護報酬を下回る価格を設定すること(=価格競争)が可能とされている。しかしながら現実には、訪問介護や通所介護では営利法人の比率が5~6割に達するなど、営利法人の参入が進んできた一方で、介護報酬を下回る価格を設定している事業者はほとんどなく、価格競争は行われていないのが現状。引き続き自由な参入を可能とするのであれば、サービスの質を確保しつつ、確実に価格競争が行われる仕組みを構築すべき。(例えば、ケアプラン作成に当たり、ケアマネジャーに価格の考慮を義務付けること等が考えられるか。)

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財政面のみで考えると確かに有効な施策かもしれませんが、ケアマネジメントの概念とどう整合性を付けていけるのかについては全くの未知数だと言えるでしょう。

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【その8】
一定の所得以上の者については、27年8月から利用者負担割合が1割から2割に引上げられるが、医療保険制度の状況も踏まえ、現役並み所得者に対する負担割合の在り方等について、更なる検討が必要ではないか。
【その9】
第2号被保険者(40~64歳)の保険料は、各医療保険者が徴収しているが(介護納付金)、これを医療保険者間で按分する際、全額が加入者割となっている。医療における総報酬割の検討状況を踏まえ、介護納付金の総報酬割についても検討を進める必要がある。

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8,9の視点を含め、今後、益々「受益者負担」「応能負担」という社会保険の原則が当たり前のように推進されてくる可能性が高いと言えそうです。

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【その10】
予防給付の地域支援事業への移行状況や生活支援サービスの充実の状況等を踏まえつつ、軽度の要介護者に対する生活援助や、訪問介護・通所介護以外の予防給付について、地域支援事業への移行や給付範囲の見直しを検討していくべきではないか。

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これらの視点が、2025年までには改正に反映されてくる可能性は高いと言えるでしょう。

現段階での情報をしっかり理解し、自分なりの仮説を予め検討しておきましょう

前述の通り財務省の役割は「国家予算の番人」であり、それ故、財務省には、予算を要求する各省庁に対し、まるで「与党・野党」の関係の如く、厳しい指摘を叩きつけることが求められています。しかし、そういった意味合いを含んだとしても、やはり、社会保障予算に対する財務省の危機感は相当なものであると言えそうです。介護事業者としてはこれらの文章から見えてくる行政側の“温度感”を感じ取りつつ、次の一手を検討していく必要があるでしょう。我々としても今後、更に有益な情報や視座が明確になり次第、皆様にお伝えしてまいります。

(2014年10月28日更新)

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